練習の質を上げるには|漫然と打たないための工夫

「今日は二時間打った」で終わってしまう練習を、変えてみませんか

同じ二時間でも、終わったあとに残るものはまるで違います。差をつくるのは才能ではなく、練習の組み立て方です。結論から言うと、その日のテーマを一つに絞り、本数ではなく成功率で見て、ミスの理由を言葉にする。この三つだけで中身は変わります。この記事では、漫然と打たないための具体的な工夫を、今日からそのまま試せる形でまとめました。

この記事でわかること

  • 練習の質を分ける「テーマを一つに絞る」という考え方
  • 本数ではなく成功率で見る方法と、ミスの原因を言葉にする手順
  • ラリーが続くこと自体が目的になってしまう罠と、その抜け出し方

まず、その日のテーマを一つだけ決める

「今日は何をよくするか」を一文にする

台に立つ前に、十秒でいいので考えてみてください。今日はどこをよくして帰るのか。それを一文にします。「バックハンドの打点を少し前にする」「サーブのあとの一歩目を早くする」。これくらいの粒度で十分です。

実は、練習の質がいちばん落ちるのは、テーマがないまま打ち始めたときです。ボールは飛んでくるので、体は動きます。動いてはいるのですが、何も決めていないと、そのときどきで気になったところを直そうとして、結局どれも定着しません。

テーマは技術名ではなく、動作で決める

ここが少しコツのいるところです。「今日はフォアハンド」だと、テーマとしては広すぎます。フォアハンドの中の、どの動作をよくするのか。そこまで落とすと練習になります。

たとえば「フォアハンドの、打ったあとに元の位置へ戻る速さ」。こう決めると、うまくいったかどうかを自分で判断できます。よくあるのが、テーマを決めたつもりで技術名を言っているだけ、というパターンです。判断できる形になっているか。ここを確かめてみてください。

決めたテーマ以外は、いったん目をつぶる

テーマを決めると、必ず別のところが気になります。打点は直したけれど、今度は足が動いていない。そんなときは、気づいたことだけ覚えておいて、その日は直さないでおきます。

一度に二つも三つも直そうとすると、どれも中途半端になります。最初のうちは物足りなく感じるかもしれませんが、一日一つで十分です。むしろ一つに絞ったほうが、次の練習に持ち越せるものが増えます。

本数ではなく「成功率」で練習を見る

「百本打った」では、何も分からない

練習の記録を本数でつけている方は多いと思います。ただ、本数は労力の記録であって、質の記録ではありません。百本打ったという事実からは、うまくいったのかどうかが読み取れないからです。

代わりに使いたいのが成功率です。十本のうち何本、決めたテーマどおりに打てたか。この見方に変えるだけで、練習中の意識がまったく変わります。一本ごとに「今のは入ったかどうか」ではなく「今のはテーマどおりだったかどうか」を見るようになるからです。

十本区切りにすると、集中が戻ってくる

長く打ち続けていると、どうしても意識が薄れてきます。そこでおすすめしたいのが、十本や二十本で一度区切ることです。区切ったところで、何本できたかを数える。それだけで集中が戻ります。

区切りは、自分の中で数えるだけで構いません。数えるという行為そのものが、ぼんやり打つことを防いでくれます。数え忘れたときは、そこが集中の切れ目だったということです。

成功率が高すぎるのも、見直しどきです

十本中九本できているなら、その練習はもう卒業していい合図です。逆に十本中一本、二本しかできないなら、課題が難しすぎます。人によって違いますが、六割から七割くらい成功する難易度が、いちばん伸びやすい範囲だと言われています。

難しすぎるときは、条件をゆるめます。ボールの速さを落とす、コースを一か所に固定する、回転を減らす。簡単すぎるときは逆に、条件を一つ足す。この調整ができるようになると、練習は自分で設計できるようになります。

ミスの原因を言葉にして、次回へ持ち越す

「なんとなく外した」を放置しない

ミスをしたあと、すぐ次のボールに向かってしまうことはありませんか。気持ちは分かるのですが、原因を考えないまま打ち続けると、同じミスを何十本も繰り返すことになります。

やることは簡単で、外した理由を心の中で一言にするだけです。「振り遅れた」「体が開いた」「回転を読み違えた」。正確でなくても構いません。言葉にした瞬間に、それは次から意識できる対象に変わります。

原因は三つの層に分けて考える

言葉にしようとしても出てこない、というときは、三つの層で探してみてください。判断、準備、打つ瞬間の三つです。

判断は、どこへ返すか、どう返すかを決める部分。準備は、そこへ体を運んで構える部分。打つ瞬間は、ラケットの角度や振り方です。実は、打つ瞬間の失敗に見えるミスの多くは、その前の準備や判断でつまずいています。三つの層をさかのぼって考えると、本当の原因にたどり着きやすくなります。

休憩中の三十秒と、帰り道のメモ

いちばん効く振り返りは、休憩中に行うものです。水を飲みながら三十秒、いま何ができて何ができなかったかを思い出す。この短い時間が、後半の練習の質を大きく変えます。

そして練習の最後に、次回へ持ち越すことを一行だけメモしておきます。スマートフォンでも紙でも構いません。「次はバック側に来たときの戻りを早く」。この一行があるだけで、次の練習は台に立った瞬間から始められます。テーマを考える時間が要らないからです。

ラリーが続くことが、目的になっていませんか

続けるための打ち方は、試合の打ち方と違うことがある

ラリーが長く続くと、うまくなった気がします。実際、続けられること自体は大切な力です。ただ、ここに落とし穴があります。

続けようと思うと、人は無意識に安全な打ち方を選びます。力を抑える、真ん中に返す、回転をかけすぎない。それを何百本も繰り返すと、その打ち方が体に染みつきます。そして試合になると、その安全な打ち方では点が取れないことに気づく。よくあるのが、練習では気持ちよく打てるのに試合で通用しない、という悩みです。

「制限つき練習」で、試合に近づける

そこで使えるのが、条件を一つ加える練習です。制限をつけると、途端に試合らしくなります。

たとえば、返球はバック側の半面だけに限る。三球目までに必ず一本は強く打つ。サーブは同じコースを続けて出さない。ミスをしたら、そこから五本連続で成功するまで続ける。どれも、ラリーを続けにくくする制限です。続きにくいからこそ、判断と対応の練習になります。

続ける練習と、崩す練習を分ける

大事なのは、どちらか一方に決めないことです。フォームを固めたい時期や、感覚を確かめたい日は、続ける練習が向いています。試合が近い時期や、実戦での判断を鍛えたいときは、崩す練習の比重を上げます。

同じ二時間の中で、前半は続ける練習、後半は制限つきの練習、と分けてもいいでしょう。今日はどちらをやっているのか。それを自分で分かっていることが、いちばん大切です。

よくある質問

Q. テーマを決めても、途中で忘れてしまいます

よくあることです。休憩のたびに思い出す仕組みをつくると続きます。ラケットケースにメモを貼る、水筒に付箋をつける。目に入る場所に一言置いておくだけで、思い出す回数が増えます。

Q. 一人で練習するときも同じやり方でいいですか

はい、同じ考え方が使えます。卓球マシンや壁打ちでも、テーマを決めて成功率で見る流れは変わりません。むしろ相手に気を使わなくていいぶん、一つの動作に集中しやすい環境です。

Q. 成功率を数えていると、打つことに集中できません

最初のうちはそうなりがちです。慣れるまでは、十本ごとにおおよそで構いません。厳密な数字より、「今日は前半より後半のほうがよかった」という感覚がつかめれば十分です。

Q. 子どもにも、この考え方を教えていいでしょうか

年齢によりますが、テーマを一つに絞ることは小学生でも実践できます。ただ、言葉が難しいと伝わりません。「今日は足を動かす日」くらいのシンプルさに置き換えてあげてください。

Q. 制限つき練習は、初心者がやっても意味がありますか

意味はありますが、順番があります。まずは基本の打ち方をある程度そろえてから、少しずつ制限を足すのがおすすめです。人によって違いますので、どのタイミングで取り入れるかはコーチに相談してみてください。

まとめ

練習の質は、時間の長さではなく組み立てで決まります。その日のテーマを一つに絞り、本数ではなく成功率で見て、ミスの原因を言葉にする。休憩中に三十秒だけ振り返り、次回への持ち越しを一行メモに残す。やることはこれだけです。

そして、ラリーが続くことが目的になっていないかを時々確かめてください。続ける練習と、あえて崩す制限つきの練習。この二つを分けて考えられるようになると、同じ二時間の中身が変わります。

全部を一度にやろうとしなくて大丈夫です。まずは次の練習で、テーマを一つ決めるところから。それだけでも、帰り道の手ごたえはきっと違います。


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