緊張しても、いつもの一本は打てます
試合になると体が固くなって、練習でできていたことができない。実は、これは卓球に限らず本番のある競技でとても多い悩みです。結論から言うと、緊張を消そうとするより、緊張したままいつもの動作を出せるように準備しておくほうが近道です。この記事では、試合前・試合中・負けている時の三つの場面に分けて、具体的な整え方をまとめました。なお、心の整え方の効果には個人差があります。合いそうなものから一つずつ試してみてください。
この記事でわかること
- 試合前に「いつも通り」を作るルーティンと、練習の組み立て方
- 試合中に呼吸・思考・戦術を立て直す具体的な手順
- 負けている時の切り替え方と、緊張そのものの捉え直し方
緊張は消えない、という前提から始める
緊張しない選手は、ほとんどいません
レッスンでよく聞かれるのが「どうすれば緊張しなくなりますか」という質問です。正直にお伝えすると、緊張をゼロにする方法は見つかっていません。長く競技を続けてきた選手でも、大事な試合の一本目は手が震えます。ここで大切なのは、緊張している自分を失敗だと思わないこと。緊張は本番だから起きる、当たり前の反応です。消す対象ではなく、連れていくものだと考えてみてください。
力が出ない原因は、緊張より「迷い」
実は、緊張そのものより厄介なのが迷いです。どのサーブを出すか決まっていない。返ってきたら何をするか決めていない。この状態で台に立つと、判断が遅れて、手だけで合わせに行く動きになります。振り切れないから、いつもの回転もスピードも出ません。逆に言えば、やることさえ決まっていれば、緊張していても体は動いてくれます。
「いつも通り」は運ではなく準備
最初のうちは、いつも通りに打てるかどうかはその日の運だと感じる方が多いです。でも、いつも通りには再現できる部分がかなりあります。試合前の過ごし方。台に入る前の動作。一本目に出すサーブ。決めておけるものを、先に決めておく。それだけで本番のブレ幅は小さくなっていきます。
試合前にやっておく三つの準備
動作のルーティンを決める
ルーティンとは、毎回同じ順番で行う決まった動作のことです。難しく考える必要はありません。ラケットのグリップを二回握り直す。台に入る前にタオルで手を拭く。サーブの前にボールを一度床でつく。この程度で十分です。大事なのは、内容よりも毎回同じであること。同じ動作を繰り返すと、体が「いつもの流れだ」と受け取りやすくなると言われています。ただし感じ方には個人差がありますので、自分がしっくりくる形に整えていってください。
練習の中に、試合の空気を入れる
練習では打てるのに試合で出ない、という声はとても多いです。原因のひとつは、練習に本番の要素が入っていないこと。ラリーを続ける練習だけでは、点数がかかる緊張までは再現できません。おすすめは、練習の終盤に短いゲームを組み込むことです。11点でなくても構いません。5点先取でも、点数がつくだけで空気は変わります。人によって違いますが、週に一度でもこの時間を作っておくと、本番との落差は小さくなっていきます。
サーブとレシーブの「型」を先に決める
レシーブとは、相手のサーブを返す最初の一本のことです。ここが決まっていないと、試合中に一番迷います。準備としては、得意なサーブを二種類だけ選び、それぞれ三球目に何をするかまで決めておくこと。レシーブも同じです。下回転が来たらツッツキ(台の上で下回転のボールを小さく返す技術)、上回転が来たら払う、と大枠を決めておきます。選択肢を減らすのは消極的なようでいて、実は一番思い切って振れる状態でもあるのです。
試合中に立て直す手順
まず、呼吸を長くする
緊張すると呼吸は浅く、速くなります。そこで、吐く息を少しだけ長くしてみてください。鼻から吸って、口からゆっくり吐く。これを二回。タオルを取りに行くタイミングや、サーブ権が変わる合間で十分できます。呼吸だけで別人になるわけではありませんが、動作を落ち着かせるきっかけにはなります。ここも個人差がありますので、無理のない範囲でどうぞ。
「次の1本」だけに戻る
よくあるのが、頭の中が過去と未来でいっぱいになることです。さっきのミスがまだ残っている。この試合に負けたらどうしよう。どちらも、今の一本には関係がありません。そこで、思考を戻すための合言葉をひとつ決めておきます。「次の一本」でも「一本集中」でも構いません。声に出さなくても大丈夫。言葉を決めておくと、頭が散らかった時に帰る場所ができます。
迷ったら、決めておいた型に帰る
試合の後半、点数が競ってくると、急に何をすべきか分からなくなることがあります。そんな時こそ、事前に決めた二種類のサーブと三球目に戻ってください。新しいことを試す場面ではありません。決めた型に帰ると判断が減り、振り切る動きが戻ってきます。仮に点を取られても、迷って手打ちになるより、ずっと中身のある一本になります。
負けている時の切り替え方
点差ではなく、一本の中身を見る
負けている時、多くの方は点差を見ます。すると焦りが出て、一本で取り返そうと無理な攻撃が増えていきます。見る場所を変えてみてください。今の一本で、足は動いたか。ボールの下にきちんと入れたか。振り切れたか。点差は自分で操作できませんが、この三つは自分で選べます。選べるものに意識を置くと、動きは戻りやすくなります。
動作をわざとゆっくりにする
焦っている時ほど、ボールを拾う動作やサーブの構えが速くなりがちです。そこで、意識してテンポを落とします。拾う、構える、一呼吸置く。時間をかけすぎると相手を待たせてしまうので、あくまで一拍だけで構いません。この一拍で、崩れかけた流れが止まることがあります。
緊張は、集中している証拠
最後に、捉え直しをひとつ。心拍が上がる。手に汗をかく。視野が狭くなる。これらは、体がその一本を大事だと判断しているサインでもあります。どうでもいい試合では、そもそも緊張しません。緊張しているのは、それだけ本気で向き合っている証拠です。「緊張してきた」ではなく「準備が入ってきた」と言い換えてみる。捉え方が変わると、同じ体の反応でも扱いやすくなることがあります。ここも人によって違いますので、しっくりくる言葉を探してみてください。
よくある質問
Q. 緊張して手が震えます。おかしいのでしょうか
本番で手が震えるのは、珍しいことではありません。多くの選手が経験しています。ただ、日常生活でも震えが続くなど気になる状態がある場合は、自己判断をせず医師にご相談ください。
Q. ルーティンは何をすればいいですか
内容は自由で構いません。グリップを握り直す、タオルで手を拭く、ボールを一度つく。この程度で十分です。大切なのは毎回同じ順番で行うこと。効果の感じ方には個人差がありますので、続けやすいものを選んでください。
Q. 練習では打てるのに、試合だと当てるだけになります
多くの場合、技術よりも判断の問題です。サーブと三球目、レシーブの返し方を先に決めておくと迷いが減ります。やることが決まっていれば、緊張していても振り切りやすくなります。
Q. 一本目のサーブは何を出せばいいですか
一番練習してきたサーブで構いません。奇をてらう必要はないと考えています。最初の一本がうまくいくと、そのあとの動作は滑らかになりやすいです。人によって違いますが、短い下回転を選ぶ方は多いです。
Q. 子どもが試合前に泣くほど緊張します
最初のうちは、結果を意識しすぎてしまうお子さんは少なくありません。勝ち負けではなく「決めたサーブを出せたか」など、自分で選べる目標を一緒に決めてあげてください。それでも心配な状態が続く場合は、無理をさせず、様子を見ながら進めていきましょう。
まとめ
緊張は消えません。消さなくて大丈夫です。やることを先に決めておけば、緊張したままでも体は動いてくれます。試合前はルーティンと試合形式の練習。試合中は呼吸を長く、次の一本だけ。負けている時は、点差ではなく一本の中身を見る。どれも今日から試せることばかりです。合う形は人によって違いますので、一つずつ試しながら、自分の型を育てていきましょう。緊張できるのは、本気で向き合えている証拠です。
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