打ったあとに体が置いていかれる。その原因は、腕ではなく足にあるかもしれません
ラリーが三球、四球と続くうちに、だんだん腕だけで振るようになってしまう。そんな感覚はありませんか。実は、手打ちになる一番の原因は腕の使い方ではなく、足が止まっていることにあります。足が動かないから、届かない場所へ腕を伸ばすしかなくなるのです。この記事では、足を動かすための構えと基本の動き、そして動きながら打つ練習の始め方を、順番に整理してお伝えします。
この記事でわかること
- 手打ちになる本当の理由と、足が止まってしまうしくみ
- サイドステップ・二歩動・飛びつき・回り込みという基本の動きの使い分け
- 動きながら打つ練習の始め方と、疲れにくくなる「戻る」という考え方
手打ちの正体は、足が動いていないこと
腕を振っているのに飛ばない理由
レッスンでよく聞かれるのが、「しっかり振っているのにボールが飛ばない」というご相談です。フォームを見せていただくと、腕はきちんと振れている方がほとんどです。ただ、足がその場に張りついたままになっています。
卓球の打球は、腕の力だけで作るものではありません。足で床を押し、その力が脚から腰、体幹を通って、最後に腕へ届きます。足が止まっていると、この流れの出発点がなくなってしまう。だから腕だけを速く振ることになり、力の割にボールが進まないのです。
「間に合わない」は反応の遅さだけではない
もうひとつよくあるのが、「反応が遅いから間に合わない」という思い込みです。もちろん反応の速さも関係しますが、最初のうちは、ボールが見えているのに体が動き出していない、というケースのほうが多く見られます。
見えているのに動けない理由は、動き出せる姿勢になっていないからです。膝が伸びきって、かかとにべったり体重が乗っていると、まず体重を移すところから始めなければなりません。その半拍が「間に合わない」の正体になっていることがあります。
動きの土台になる構えと重心
膝を軽く曲げ、かかとを少し浮かせる
足を動かすための出発点は、構えの姿勢です。両足を肩幅よりやや広めに開き、膝を軽く曲げます。深くしゃがみ込む必要はありません。椅子に浅く腰かける手前くらい、と考えると分かりやすいと思います。
そして、かかとを少しだけ浮かせます。紙一枚分で構いません。母指球、つまり親指の付け根あたりに体重が乗っている状態です。この形になっていると、どちらへでも一歩目を出せます。逆に、かかとが床についていると、体は一度後ろへ流れてからでないと動けません。
重心は真ん中より少し前に置く
重心の位置も、動きやすさを大きく左右します。目安は、体の中心線より少し前です。上体をやや前傾させ、おへそが軽く台の方を向いているイメージを持ってみてください。
ここで気をつけたいのが、前傾を背中を丸めて作らないことです。背中が丸まると、腕を振る空間がなくなってしまいます。股関節から折るように上体を倒すと、背筋を保ったまま前重心が作れます。人によって違いますが、体が硬いと感じる方は、無理に深く倒さず、できる範囲から始めるほうが結果的に長続きします。
基本になる四つの足の動き
サイドステップと二歩動
サイドステップは、進みたい方向の足から動かし、もう一方の足を引き寄せる横移動です。台の前を左右にずれていくときの、いちばん基本の動きになります。足を交差させないので、次の一歩がすぐに出せるのが利点です。
二歩動は、その名のとおり二歩でボールの位置に入る動きです。一歩目で方向を決め、二歩目で打つ位置に体を収めます。近い距離を細かく調整するのに向いていて、実戦では最も出番が多い動きだと感じています。まずはこの二つを、ラケットを持たずにその場でやってみるだけでも感覚がつかめます。
飛びつきと回り込み
飛びつきは、フォア側へ大きく振られたボールに対して、体ごと横へ移動して打つ動きです。腕を伸ばして届かせるのではなく、足で距離を詰めるのが目的になります。ポイントは、打ったあとに戻る力を残しておくこと。飛び出した勢いで体が流れきってしまうと、次の球が返せません。
回り込みは、バック側に来たボールを、体を左へ回り込ませてフォアハンドで打つ動きです(右利きの場合)。強く打てる形を作れる反面、フォア側が大きく空きます。最初のうちは、無理に回り込もうとせず、バックで返す判断も同じくらい大事に考えていただくといいと思います。
動きながら打つ練習の始め方
まずは2点フォアから
止まって打つ練習から、動きながら打つ練習へ移るとき、最初の一歩としておすすめしやすいのが2点フォアです。フォア側の二か所へ交互に送ってもらい、フォアハンドだけで打ち返します。打ち方は変えず、足で位置に入ることだけに集中します。
コツは、二か所の幅を狭くすることです。いきなり台の端から端まで動こうとすると、フォームが崩れてしまいます。最初は台の半面ほどの幅で、確実に足が使えている状態から広げていくほうが、結局は早く身につきます。
フォア・バックの切り替えへ
2点フォアで足が動くようになったら、フォアとバックの切り替えに進みます。ここで大切なのは、打つ手を変えることではなく、足の位置を変えることです。フォアとバックでは、体の向きも、ボールとの距離も変わります。
切り替えがうまくいかないときは、テンポを落としてみてください。速いラリーの中で覚えようとすると、間に合わせの動きが身についてしまいます。ゆっくりでいいので、毎回きちんと足で入る。その積み重ねが、速いテンポでも崩れない形を作ります。
疲れやすい人は「動く量」より「戻る」
フットワークが続かないと感じている方に、まず意識していただきたいのは「戻る」ことです。多くの場合、動く量が足りないのではなく、打ったあとに元の位置へ戻れていないことが、次の球への遅れを生んでいます。
戻る位置は、台の真ん中よりわずかにバック寄りが基本の目安になります。打ったらすぐ戻る、を一つのセットとして覚えてしまうと、無駄な大移動が減り、同じ体力でも動ける球数が増えていきます。人によって違いますが、この意識だけでラリーが一、二球伸びる方は少なくありません。
疲れやすさが息切れとして出る場合は、動く速さよりも呼吸のリズムを整えることを優先してください。持病がある方や、膝や腰に痛みが出ている方は、無理をせず医師に相談したうえで練習量を決めていただければと思います。
よくある質問
Q. 走り込みをすればフットワークは良くなりますか
体力は助けになりますが、それだけでは打球位置に入る動きは身につきにくいと言われています。卓球で必要なのは短い距離を素早く出入りする動きです。台の前で行う小さな移動練習を、並行して取り入れるのがおすすめです。
Q. かかとを浮かせると疲れてしまいます
浮かせすぎている可能性があります。紙一枚分で十分で、つま先立ちになる必要はありません。ラリーの合間には一度かかとを下ろして休み、球が来る直前に浮かせる、という切り替えができると負担が減ります。
Q. 回り込みはいつから練習すればいいですか
サイドステップと二歩動が安定してからで遅くありません。順番を飛ばすと、体が流れて次の球に戻れない形が癖になりやすいためです。判断を含めて練習したい時期になったら、コーチに相談してみてください。
Q. 大人から始めても足は動くようになりますか
なります。上達の速さは人によって違いますが、足の使い方は年齢に関係なく整えられる部分です。最初のうちは大きく速く動くことより、構えと戻りを丁寧に作るほうが、変化を感じやすいと思います。
Q. 家でできる練習はありますか
ラケットを持たずに、構えの姿勢から左右へ二歩動く動きを繰り返すだけでも練習になります。鏡があれば、膝が伸びきっていないか、上体が起き上がっていないかを確認できます。短い時間を毎日続けるほうが効果的です。
まとめ
フットワークが続かない原因は、体力よりも先に、構えと戻りにあることが多いものです。膝を軽く曲げ、かかとを少し浮かせて、いつでも一歩目が出せる姿勢を作る。サイドステップと二歩動という基本から始め、2点フォア、フォア・バックの切り替えへと段階を踏んでいく。そして何より、打ったら戻る。
足が動くようになると、同じフォームでも打球が安定し、ラリーが自然と続くようになります。今日の練習では、動く量を増やすことより、一球打つたびに元の位置へ戻ることだけを意識してみてください。その小さな変化が、いちばん確かな近道になります。
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