自分のフォームを動画で見ると上達が早い理由

「できているつもり」が、いちばん気づきにくい

練習しているのに、なかなか打球が安定しない。コーチに言われたことを直したつもりなのに、次の週にはまた同じ指摘を受ける。そんなときに効くのが、自分のフォームを動画で撮って見返すことです。

理由はシンプルで、私たちの感覚と、実際に体が動いている形は、思っている以上にズレているからです。この記事では、なぜ動画が上達を早めるのか、どこを見ればいいのか、そして撮るときと見るときの注意点をまとめました。

この記事でわかること

  • 自分の感覚と実際の動きがズレる理由と、動画がそれを埋めてくれるしくみ
  • 動画で確認すべき4つのポイント(打球点・体の向き・ラケットの角度・足の位置)
  • 撮り方のコツと、見返すときにやってはいけないこと

感覚と実際の動きは、想像以上にズレています

「振れているつもり」で止まっている

レッスンでよく聞かれるのが、「言われた通りにやっているつもりなんですが」という言葉です。実は、これはとても自然なことです。人間は自分の体を外から見ることができません。頭の中にあるのは「こう動かしたい」というイメージだけで、実際にどう動いたかは分からないまま次の球が飛んできます。

たとえば「もっと下から上に振ってください」と伝えると、多くの方は本当に大きく振り上げたつもりになります。ところが動画で見ると、ほんの少し角度が変わっただけ、ということがよくあります。逆に「少しだけ」と伝えたのに、大きく振りすぎている方もいます。どちらが多いかは人によって違いますが、ズレていること自体は、ほぼ全員に共通しています。

動画は「言葉」と「感覚」の通訳になる

コーチの言葉は、どうしても抽象的になります。「もう少し前で」「肘を張らずに」と言われても、その「少し」がどれくらいなのかは、受け取る側の感覚に委ねられます。

そこに動画が入ると、話が一気に早くなります。画面を一緒に見ながら「この瞬間のここです」と指させば、言葉のやり取りが一往復で済みます。最初のうちは自分の動きを見るのが少し恥ずかしいという方もいますが、二、三回も撮ると気にならなくなります。むしろ「次はここを見てほしい」と自分から言えるようになる方が多いです。

動画で分かる4つのポイント

打球点──どこでボールをとらえているか

打球点とは、ラケットがボールに当たる位置とタイミングのことです。体から見て前なのか横なのか、そしてバウンドの上がりぎわなのか、頂点なのか、落ちてきたところなのか。ここが安定しない限り、フォームだけを直しても打球はそろいません。

よくあるのが、打球点が体の真横か、少し後ろになっているケースです。本人の感覚では「前で打っている」のに、動画では明らかに詰まっています。これは一時停止して1コマずつ送ると、はっきり見えます。

体の向きと、ラケットの角度

もうひとつ見てほしいのが、打つ直前の体の向きです。フォアハンド、つまり利き手側で打つ打ち方では、腰と肩がわずかに後ろを向いてから前に戻る動きが生まれます。この「ためて、戻す」がないと、腕だけで振ることになり、力が伝わりません。

ラケットの角度も動画向きのテーマです。前に傾いているのか、上を向いているのか。回転をかけたいときと、まっすぐ弾きたいときでは角度が変わります。自分がどちらの角度で打っているかは、感覚では意外と分かりません。

足の位置と、体重の移り方

打ち方の話になると、どうしても腕に目が行きます。ただ、動画で下半身だけを見てみると、原因がそこにあることも少なくありません。足がほとんど動いていない、両足の幅が狭い、打った後もその場に立ったまま。この三つはとても多いパターンです。

画面の下半分だけを見る、という見方をおすすめしています。上半身を意識から外すと、足の踏み替えや体重が右から左へ移る動きが、急に見えるようになります。

撮り方のコツ

横から・後ろから、二つの向きで

一方向だけでは分からないことがあります。横から撮ると、打球点の前後、体の前傾、ラケットの高さの変化がよく見えます。後ろから撮ると、体の向き、ラケットの軌道が左右にぶれていないか、足の幅が分かります。

理想は両方ですが、一度に両方は難しいので、今日は横から、次は後ろから、と分けても十分です。

手で持たず、固定して撮る

手持ちで撮ると画面が揺れて、体が動いているのかカメラが動いているのか分からなくなります。台の横のいすや、かばんの上にスマートフォンを立てかけるだけでも、ぐっと見やすくなります。三脚があればなお良いですが、なくても構いません。

大事なのは、毎回できるだけ同じ位置から撮ることです。位置がそろっていれば、一か月前の自分と今の自分を並べて比べられます。

スロー再生と一時停止を使う

卓球のスイングは一秒かかりません。等倍で見ても、正直ほとんど分かりません。スロー再生機能を使い、さらに打つ瞬間の前後で一時停止する。この二つで、見える情報が何倍にもなります。

見るのは全部ではなく、うまくいった一球と、うまくいかなかった一球。この二つを並べるだけで、違いが浮かび上がってきます。

周りへの配慮を忘れずに

練習場所は自分だけの空間ではありません。撮影の前に、近くで練習している方に一声かけておくと安心です。「フォーム確認で自分を撮らせてもらいます」と伝えるだけで、受け取られ方はまったく変わります。

背景に他の方が写り込むこともあります。その動画を誰かに送ったり、SNSに上げたりするのであれば、写っている方の了解を取ってからにしてください。施設によっては撮影のルールが決められていることもあるので、初めての場所では確認しておくと安心です。

見返すときに気をつけたいこと

粗探しの道具にしない

動画は、良くも悪くも正直です。だからこそ、見た瞬間に落ち込む方もいます。最初のうちは「思ったより体が動いていない」「変な形で振っている」と、悪いところばかりが目に入ります。

でも、動画は自分を採点するためのものではありません。次に何をするかを決めるための材料です。まずは「できているところ」を一つ探してから、直したいところを見る。この順番にするだけで、気持ちの持ちようが変わります。

直すのは、一度に一つだけ

気になる点は、たいてい五つも六つも出てきます。ここで全部を直そうとすると、体が固まって、かえって打てなくなります。

選ぶなら、いちばん根っこにありそうなものを一つ。多くの場合、打球点か足の位置です。ここが整うと、腕の形は自然と落ち着くことがあります。一つを二週間続けて、また撮る。この繰り返しが、いちばん近道です。

他人の動画と比べるときの落とし穴

上手な選手の動画を参考にするのは、とても良いことです。ただ、そのまま自分に当てはめようとすると、うまくいかないことがあります。

身長も腕の長さも違えば、戦型、つまり前で速く攻めるのか、下がって粘るのかという戦い方も違います。使っている用具も違います。同じ形を目指しても、体の作りが違えば同じ動きにはなりません。

参考にするなら、形そのものではなく「打つ前にどう構えているか」「打った後どこに戻っているか」といった、考え方の部分です。どこを真似ればいいか迷ったら、コーチに聞いてみてください。自分の体格や戦型に合わせて、取り入れる部分を選んでもらえます。

よくある質問

Q. どれくらいの頻度で撮ればいいですか

毎回でなくて構いません。二週間から一か月に一度でも、変化は十分に分かります。頻度より、同じ角度・同じ距離でそろえることのほうが大切です。

Q. スマートフォンのカメラで十分ですか

十分です。最近の機種はスロー再生にも対応しているものが多く、フォーム確認には困りません。画質より、固定できているかどうかのほうが影響します。

Q. 初心者でも動画を撮る意味はありますか

あります。むしろ、始めたばかりの時期のほうが変化が大きく、見比べたときの手ごたえを感じやすいです。早い段階で自分の動きを見慣れておくと、後から直す手間も減ります。

Q. 撮った動画を見ても、何が悪いのか分かりません

それが普通です。最初は「良い・悪い」ではなく、打球点や足の位置など、見るポイントを一つ決めて眺めるだけで構いません。判断に迷う部分は、動画を持ってコーチに見てもらうのが早道です。

Q. 試合の動画も撮ったほうがいいですか

余裕があればおすすめです。練習では出ない癖が、試合では出ます。ただし会場によっては撮影が制限されている場合があるので、必ず主催者や周囲の方に確認してください。

まとめ

感覚と実際の動きがズレるのは、誰にでも起きることです。だからこそ、自分の姿を客観的に見られる動画は、練習の質を変えてくれます。

見るべきは、打球点、体の向き、ラケットの角度、足の位置。撮るときは横と後ろから、固定して、スロー再生で確かめる。そして見返すときは、粗探しをせず、直すのは一つだけ。周りへの一声も忘れずに。

今日の練習の最後に、一分だけ撮ってみてください。その一分が、次の一か月の練習を変えてくれるはずです。


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